染色家・志村ふくみさんが「美しい桜色に染まった糸で織った着物は、桜の花びらから染めたものではなく、実際は桜の木の皮から取った色です」と語っています。
桜の花が咲き出そうという時節、根から幹、枝の木全体で懸命になって最上のピンクの樹液を花に送り茜色の花を咲かせるのです。
桜の花が美しいのは、この見えない力があるからです。
詩人・相田みつをさんも「花を支える枝 枝を支える幹 幹を支える根 根はみえねんだ なあ」と書き、「土の中の水道管 高いビルの下の下水 大事なものは 表にでない」と詠んでいます。
文豪ゲーテは、言葉や思いについて「心の底から出てこなくては、人の心に届かない」と説いています。
届けたい言葉の根底が桜の花びら一枚、一枚なのかもしれません。
見えない力こそが「まごころ」なのですね。